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NUS MBAが国際貿易人材向け奨学金を新設。最大5万Sドルの支援を、進学判断にどう使うか

NUS MBAの新奨学金。授業料支援は最大5万シンガポールドル、2027〜2029年・毎年5名。シンガポールの港と国際貿易を表すイメージ画像。

情報確認日:2026年11月3日

「海外MBAには関心がある。でも、費用に見合う学びを得られるだろうか」。奨学金のニュースを読むとき、支給額だけで学校選びを進めてしまうのは避けたいところです。自分の仕事と制度の目的がつながるなら、資金面とキャリアの両方から検討する価値があります。

シンガポール国立大学(NUS)Business Schoolは10月28日、国際貿易分野の人材を育てる「Global Trade Leaders Scholarship」を発表しました。日本人志望者にとっての注目点は、貿易・海外事業の経験を、MBAで何を学び直すかという問いへつなげられることです。ただし、日本国籍での申請条件や追加支援の詳細は、個別確認が必要です。

何が新しく発表されたのか

NUSがHinrich FoundationとShanghai Baolong Automotive Corporationと設立した制度です。発表では、2027〜2029年の3年間で総額75万シンガポールドル(以下Sドル)を支援し、毎年5名のMBA学生に、授業料向けとして1人最大5万Sドルを提供するとしています。対象課程はフルタイムとパートタイムで、国際貿易に従事する人、または関連分野のキャリアを目指す人を支援します。NUS公式発表・2026年10月28日

75万Sドルは制度全体の3年間の規模です。1人への支給額でも、毎年の支援額でもありません。また、年間5名という人数から合格率や日本人の採用枠を推定することはできません。

一方、現在の資金案内には、5万Sドルの奨学金に加え、最大2万Sドルの追加grantによって総支援が7万Sドルになる旨も掲載されています。発表の「最大5万」と混ぜて、全員が7万Sドルを受け取れるとは読まないことが重要です。追加grantの対象条件・併用条件は、確認した記述では特定できませんでした。NUS公式・資金案内

奨学金を引いた金額だけで、留学予算を作らない

同校が公表する2027年8月入学の授業料は、GST込みで106,849.76 Sドルです。これは生活費や渡航費を含む留学総額ではありません。NUS公式・授業料

支援が得られれば負担を減らせますが、採用前から最大額を差し引くと、不採用や支給時期の違いに対応できなくなります。まず「奨学金なしでも用意できる現金」と「採用された場合に減らせる負担」を分けてみましょう。授業料のほか、住居、生活、保険、渡航、家族帯同の有無を別々に積み上げると、何が進学の制約なのかが見えてきます。

休職や退職による収入の変化も重要ですが、それを授業料と同じ支払予定表へ一括で足すと混乱します。大学へ支払う時期と、家計の収支が変わる時期を分けて確認することを勧めます。これは本稿の資金計画上の整理であり、NUSが示した個別の資金調達条件ではありません。

「貿易の経験」を、どのような学習課題へ変えるか

ここからは学校選びへの考察です。この制度に関心を持つなら、「海外と仕事をしてきました」で止めず、越境する事業のどこで判断の難しさを感じたかを言葉にしてみてください。

例えば、海外調達で価格と供給継続性の両立に悩んだ経験。現地販売会社と本社の目標が食い違い、利益と長期的な関係をどう評価するか迷った経験。これらは架空の例ですが、「自分に足りない分析・交渉・組織運営の力」を考える出発点になります。

そこから、経験した課題、MBAで身につけたい能力、修了後に担いたい仕事の順につなげます。「奨学金の対象になりそうだから志望する」よりも、自分の課題に対してNUSで学ぶ理由があるかを先に確かめたいところです。制度の趣旨に合わせて、存在しない実績や将来計画を作る必要はありません。

また、フルタイムとパートタイムでは、仕事の継続や通学の前提が異なります。NUSのFAQでは、MBAは基本的にシンガポールのキャンパスで学ぶ対面課程であり、完全オンライン・ハイブリッド課程ではないと説明しています。奨学金の対象課程に含まれることと、日本から現在の生活のまま受講できることは別に確認しましょう。NUS公式FAQ・授業形式

加えて、現行の出願要件は、パートタイム課程へ出願する外国籍の志願者について、出願時に有効なシンガポールでのフルタイム就業または居住を示す証拠の提出を求めています。これは課程への出願要件であり、奨学金の国籍条件を意味するものではありません。NUS公式・出願要件

次の出願ラウンドまでに、確認すること

2027年8月入学のフルタイムMBAは、Round 1の10月29日を過ぎ、次のRound 2は2027年1月20日です。ただし、これはMBA出願の締切で、新奨学金独自の締切と確認できたわけではありません。NUS公式・出願日程

申請方法にも注意が必要です。公式の資金案内冒頭では、奨学金審査は自動ではなく、出願フォームの該当欄で希望を示すよう案内しています。FAQも「NUS Business School Supplementary Question」で意思表示を求めています。一方、資金案内の下部には自動審査という記述も残り、同じページ内で説明が一致していません。自動的に対象になると考えず、希望表示を行ったうえで、この新制度に追加書類や別の手続きが必要かを入試担当に確認してください。NUS公式FAQ・奨学金申請

問い合わせでは、次の4点をまとめると判断しやすくなります。

  • 自分の国籍・職務経験・希望課程で、新制度の選考対象になるか。
  • 新奨学金の申請期限と、出願画面で必要な選択・書類は何か。
  • 追加grantの条件と、他の支援との併用可否はどうなっているか。
  • 採否の通知時期、授業料への充当時期、受給後の条件は何か。

今回のニュースは、NUSを検討する理由を一つ増やします。次の行動は、最大支給額だけを比較表に転記することではありません。まず「自分が解きたい仕事上の課題」を一つ書き、その学習計画と、支援がなくても成立する予算を並べてみてください。そのうえで制度の条件を確かめる順序なら、奨学金を進路の判断材料として使えます。

学校自体の要件は、NUS MBA出願ガイドでも整理しています。

著書プロフィール

土佐徳彦 | Naruhiko Tosa

AFFIANCE Learning Studio創業者・代表。2003年より海外MBA・海外大学院受験指導に携わり、Harvard・Stanford・INSEADなどを含む国内外のMBA・海外大学院への合格者700名以上を支援。GMAT対策、英語読解、論理思考を専門とし、受験からキャリア設計までを支えている。

2016年にバイオベンチャーCaetus Technology株式会社を創業し、2023年3月までCEOを務める。高機能ハンドクリームの開発、ブランド構築、知財、事業開発を主導。在任中に同社製品が2020年度・2021年度の2年連続でグッドデザイン賞を受賞し、2022年には「Hands Å P.P.」がJAXAの生活用品アイデア募集で選定された。その後、宇宙仕様の「Hands Å P.P. UNIVERSE」は2025年に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載され、大西卓哉宇宙飛行士によって実際に使用された。

現在は、思考の型「TOSA Logic Engine(TLE)」と、AI時代の第二の脳「My Brain / Company Brain」を軸に、教育、キャリア、経営、AI活用を横断的に研究・実践。教育と事業経営の経験を生かし、AI時代の学び直しと知的生産の再設計について発信している。

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